~解雇~
「突然解雇されたが、まだ働きたい。」
使用者は、社会的に相当で客観的に合理性のある理由
がなければ解雇できず、不当な理由の解雇は無効です。
不当な理由で解雇された場合、労働審判、民事裁判等で
使用者に対して労働契約上の地位確認(解雇無効確認)
を求めます。また、金銭解決の交渉をします。
例えば、事業の経営が悪化し、解雇する場合
(整理解雇)、次の要件をすべて満たさなければなりせん。
①整理解雇する経営上の必要性がある
②整理解雇対象者の人選に合理性がある
③使用者が整理解雇を回避する努力を尽した
④労働者との協議、説明を尽した。
「公務員だが、飲酒運転で懲戒免職処分を受けた」
なお、公務員の場合は、労働審判は利用できません。
公務員の分限処分、懲戒処分の場合は、
原則として、人事院などへの審査請求を行い、
不服がある場合、裁判所へ
行政訴訟としての取消訴訟を提起
していくことになります。
~休職の申出~
休職とは、労務に従事させることが不可能もしくは
不適当な事由が発生したときに、労務への従事を
免除し、またはこれを禁止することをいいます。
休職の内容は、企業毎に異なります。
私傷病による休職の申出について、使用者は、
原則として、拒否できないと考えられています。
なお、客観的に労働能力を喪失し、回復の見込みが
ない場合は、休職を経ないで退職扱いすることも
有効とした裁判例があります。
~休職と受診義務~
使用者は、休職の当否を決定するに当たって、
専門医の診断を受けるよう求めることができ、
労働者は、これに応じる義務があるとされています。
~休職命令~
使用者が、労働者に、休職を命じることについては、
労働者が真に労務を提供できない健康状態にあるか
否かにより決せられます。
従前の業務はできないが、他の業務ならできる場合、
労働者が職種や業務内容を限定せず契約したとき、
現実的可能性がある他の業務について労働でき、
それを申し出ている場合なら、労働を認めるべき
とされています。
~休職の検討~
精神的な不調が原因で欠勤した場合、
欠勤を理由として退職処分するのではなく、
精神科医による健康診断を実施するなど
したうえで、必要な場合は、治療を勧め、
休職等の処分を検討し、その経過をみるなど
の対応をとるべきとされています。
~休職期間満了における復職判断~
従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合、
又は当初軽易作業に就かせればほどなく従前の職務を
通常の程度に行える健康状態になった場合、
復職可能と判断すべきとされています。
また、労働者が職種や業務内容を特定せずに契約
した場合は、現実的可能性ある他の業務に従事
すれば労働でき、それを申し出ている場合は、
復職可能と判断すべきとされています。
なお、事業者には障害者に対する合理的配慮の
提供義務が要請されています。
(障害者雇用促進法)
~試用期間後の本採用拒否~
試用期間後の本採用拒否は、通常の解雇
より広い範囲で認められると考えられています。
もっとも、本採用を拒否するには、客観的に
合理的な理由が存し社会通念上相当であることが
必要であるとされます。
そして、採用決定後の調査の結果又は試用期間中
の勤務状態等により判明した事由に基づくもので
なければならないと考えられています。
~給料未払いに対する対処~
給料の裏付けとなる資料(給与明細、給与規定等)を
確保します。
賃金未払い(給料未払い)は、労基法違反で、
30万円以下の罰金が科される可能性があります。
労基署への申告、交渉で解決しない場合、
裁判を検討します。
会社から未払労働債権額証明書(代表者印、
印鑑証証明書添付)を得ることができれば、
先取特権の行使により、迅速に、会社財産の
差押えが可能となります。
~会社が破産した場合の未払給与退職金~
独立行政法人労働者健康安全機構の
未払賃金立替払制度の対象となれば、同制度に
より、未払いの賃金もしくは退職金の支払い
が受けられます(上限あり)。
退職前6か月以内の未払い賃金額(解雇予告手当
は含まれません)もしくは退職金が2万円以上の方が
対象となります(上限あり)。
なお、退職後6か月以内に裁判所への破産手続開始の
申立て又は労働基準監督署長の認定申請がされなかった
場合は、立替払いの対象となりません。
立替払の請求ができる期間は、破産手続開始決定等の日
の翌日から起算して2年以内です。
~労働条件の変更に対する同意の有無~
「給料賃金減額を無理やり合意させられた」
就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更
に対する労働者の同意の有無については,
当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,
当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,
労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,
当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等から,
当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認める
に足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から
判断されるべきものと解するのが相当である
とされています。
合意したとしても、無効となる可能性があります。
~会社からの損害賠償請求について~
「会社から損害賠償を請求されている」
労働者の負う損害賠償義務は、
信義則上制限されます。
①労働者の帰責性(故意、過失の有無、程度)
②労働者の地位、職務内容、労働条件
③損害発生に対する使用者の寄与度
(指示内容の適否、保険加入による危険回避等)
等から判断されます。
会社から労働者に対する損害賠償や求償権の行使
を否定している裁判例も多いです。
~給料賃金からの相殺について~
「会社から、損害賠償を請求され、給料から
一方的に天引きされた」
会社が労働者に対して、損害賠償請求権や求償権
を持っていても、一方的に賃金から相殺することはできません。
なお、労働者が自由な意思に基づいて、相殺することに
同意した場合は、この同意が労働者の
自由な意思に基づいてなされたものであると認める
に足りる合理的な理由が客観的に存在する場合、
相殺が認められます。
合意したとしても、無効になる可能性があります。
会社から損害賠償しない限り退職させない、毎月給料
から天引きして支払ってもらう、といわれた場合でも
退職することは自由です。
損害賠償義務については、信義則上制限されるため、
額が過大か、そもそも発生していない可能性もあります。
~雇止め~
「一年毎に労働契約を更新してきたが、
今回は更新されなかった」
契約期間や更新の回数、使用者の発言や態度から
契約の更新を期待することに相当な理由がある場合、
雇止めは無効とされ、契約の更新が認められます。
※費用の詳細は弁護士費用ページをご参照ください。
~残業代未払い~
「勤務先が残業代を出してくれない、
払ってもらうにはどうしたらいいか」
勤務先(使用者)が残業代を支払わない場合、
労働基準法で定められた方法により算出される
額の割増賃金の支払いを求めることができます。
交渉、労働審判、民事裁判等により、
基礎賃金に割増率を掛けて
計算された額の未払残業代を請求します。
「基礎賃金の計算方法は?」
一時間あたりの基礎賃金は
1か月の基礎賃金(月額給料ー除外手当)
÷1か月の所定労働時間で計算します。
「残業代を受け取らないという合意をしたが、
この合意は有効か?」
労働者が、書面でこのような合意したとしても、
無効になると解されています。
「会社から指示を受けて、待機している
時間も労働時間になるか?」
客観的に、会社の指揮命令下に置かれているならば、
原則、待機している時間も労働時間になります。
その分の残業代を請求できます。
労働時間にあたるか否かは、
労働から解放されているか、場所的時間的拘束
の程度、等から判断されます。
例えば、医師が当直中、仮眠をとることが
あるとしても、待機時間についても,実態として
昼間と同様の勤務が予定されているとして
残業代を請求できるとした高裁裁判例があります。
「医師として勤務しているが、残業代の支払がない。
残業代の請求ができるか」
年俸について、たとえ高額でも、通常の労働時間の
賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを
判別することができない場合は、残業代及び
割増賃金を請求することができます。
「業務手当として、定額のみなし残業代
が支払われている」
使用者は、労働者に対し、雇用契約に基づき、
時間外労働等に対する対価として定額の手当を
支払うことにより、割増賃金の全部又は一部を
支払うことができます。
ある手当が時間外労働等に対する対価として
支払われているか否かは、契約書等の記載内容、
説明の内容、労働者の実際の労働時間などの
勤務状況などの事情を考慮して判断されます。
~パワハラ・セクハラ~
「職場でいじめ、セクハラを受けている。
法的手段をとれないか」
いじめ、セクハラを受けた人は、加害者に対し、慰謝料
の支払いを求めることが考えられます。
また、使用者は、労働者が業務に従事する上で
重大な支障が生じることを防ぎ、働きやすい職場環境
を保つ義務を負うものと考えられています。
従って、使用者に対して損害賠償請求
することも考えられます。
~マタハラ~
「妊娠をしたところ、会社から降格
させられた」
「産前休業の取得を上司に相談したところ、
休みをとるならやめてもらうといわれた」
「上司に妊娠を報告したところ、他の人を
雇うので早めにやめてもらうしかない、
といわれた」
妊娠、出産を理由に、解雇、不更新、降格、
制度等の利用への嫌がらせなど
不利益な取り扱いをすることは
原則として違法になります。
~労災申請~
「夫が過労死したが、
会社が労災保険を申請してくれない」
「仕事で機械の作業中にけがをした」
「通勤中に事故に遭い、けがをした」
働きすぎが原因で亡くなった場合、
遺族は、労災補償を受けることができます。
労災保険制度とは、仕事が原因のケガや病気
などによって会社を休まなければならなくなったり、
身体に障害が残ったり、亡くなったりした場合に
国が労働者や遺族に必要な補償をする制度です。
労働者やその遺族は、労働基準監督署に
労災保険(労働者災害補償保険)
の給付申請を行うことができます。
業務上の災害や通勤中の災害による負傷の場合、
労災申請により、
治療費、休業補償、障害が残った場合の補償
遺族補償、葬祭料、介護補償などが受けられます。
障害補償給付のうち7級以上は年金形式で
支給されます。
遺族補償は、原則、遺族補償年金という形式で
支給されますが、例外的に遺族補償一時金とされます。
以上の労災申請は、会社が申請に協力しなくても、
申請できます。
※なお、公務員の場合は、公務災害として
別途の手続きとなります。
国家公務員は人事院、
地方公務員は地公災基金支部に申立てします。
~会社が労災保険未加入の場合~
会社が労災保険未加入でも、労働者に
対する補償は行われます。
~業務上災害の場合の解雇制限~
労働者の負傷・疾病が業務上災害と認定された場合、
療養のため休業する期間及びその30日間は、
原則解雇禁止となります。
なお、業務上の負傷・疾病が治癒(症状固定)
した後に、職場復帰不能を理由に解雇すること
については、この解雇制限は適用になりません。
~労基署の認定に納得いかない場合~
「労基署に労災申請したが、非該当になった」
労基署の認定に納得がいかない場合は、
3か月以内に、労働者災害補償保険審査官に対し、
審査請求という手続きにより不服申立てします。
その結果に納得がいかない場合、
再審査請求という手続きか、裁判所に対し
行政訴訟として、取消訴訟を提起していくことになります。
※費用の詳細は弁護士費用ページをご参照ください。